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2016年12月20日 (火)

【名】鳥の巣に鳥が入つてゆくところ/波多野爽波

季語:鳥の巣(三春)

先に書いた芝不器男の「寒鴉」の句とは、また別な意味で虚を衝く一句です。
「えっ?coldsweats01
と、この句を初めて目にした方の多くが思うのではないでしょうか。
そして、「鳥の巣に鳥が・・・」と記憶をまさぐり、あるいは脳内で描き出し、
尾っぽ(お尻)をふりふり巣に入ってゆく小鳥の可愛らしさに笑顔を浮かべるでしょう。
その巣は、読者によっては、小鳥自身が木の枝に拵えたものだったり、
丸い穴の開いた三角屋根の巣箱だったり、藁編みの壺巣だったりするでしょうし、
この句を知ったら、他の誰かに話を振って、
お互いにイメージを語り合って一緒に笑いたくなるような、
そんな明るさのある楽しい句だと思います。
以来ことあるごとに「何々が何かしようとするところ」と心の中でついつい詠んでしまい、
絶大な波及効果に気づいて、ひそかな戦慄を覚えることもあるかと思われます。
俳句の、ひとつの決め台詞を生み出したといっても過言ではないかも知れません。
(不勉強で、他にもっと古くからあったらすみませんsweat01
「それなら自分にも詠めるかも」と思えるような敷居の低さと、
「自分にはこんな句詠めないよ」と思わせる特異な着眼点。
そこには、感じて欲しい何かを漂わせる部分が一切ありません。
まさに「それだけ」をポンと記して寄越した純粋な「写生」の句です。
ただ、鳥の巣に鳥が入っていく、ただそれだけ。
増殖する俳句歳時記』に、こう書かれています。
通常ならば、「鳥の巣に鳥が入つてゆきにけり」としてしまいがち。
しかし、それでは、単なる事実の報告になってしまって、面白味がなくなってしまう。
下五「ゆくところ」の「ところ」という把握と描写に、的確な写生の醍醐味を感じる。
         『鋪道の花』(昭和31年)所収。(中岡毅雄)



「写生」の中に「情緒」を、という「花鳥諷詠」を説いた高浜虚子の門下生でありながら、
「情緒」をどっかに置いてきて、徹底的に「そのことだけ」を詠んだ俳人。

しかし虚子先生は言っておられます。
「どのような俳句がよい俳句か、といえば、それは(中略)渇望に堪えない句は、
単純なる事棒の如き句、重々しき事石の如き句、無味なること水の如き句、
ボーっとした句、ヌーっとした句、ふぬけた句、まぬけた句等」
・・・これ、まさに波多野爽波や高野素十のことではないかしらん、と思う次第。
高野素十の外連味のない詠みっぷりは見事で、大いに憧れるところですし、
波多野爽波も、本当に面白い句を詠む人で、原型力のある句が多い、と感じます。

西日さしそこ動かせぬものばかり
秋の夜の時計に時計合せ寝る
はじめより水澄んでゐし葬りかな
大根の花まで飛んでありし下駄
蓑虫にうすうす目鼻ありにけり
チューリップ花びら外れかけてをり
炬燵出て歩いてゆけば嵐山

一度読んだが最後、「その句が」という以上に「その詠みっぷり」が心に残り、
同じような物言いの句が、いつのまにか自分からも出て来る。
「こんなふうに詠んでもいいんだ」と、表現の幅を広げてくれる・・・。
そういえば、私が今年の秋日記タイトルに書いた「台風の前日をただ遊びけり」は、

春宵を番台にただ坐りをり  

が原型だったのかも知れません。嗚呼、素晴らしきかな波多野爽波wave
そうそう!先日読んだ「ねこのほそみち」最後の一句が波多野爽波でした。

冬空や猫塀づたひどこへもゆける

それまでいろんな猫の句、いろんなシーンが展開された後で、最後の一句にこれ。
ぱあっと目の前が開けていくようで・・・
堀本裕樹先生の抜群の編集能力にも心震えますshinelovelyshine

俳句も、きっとどこにだってゆける。
無限に広がる俳句の世界に「私も入ってゆくところ」なのです。

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