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2017年2月11日 (土)

【名】野遊びの妻に見つけし肘ゑくぼ/森澄雄

妻を題材にした句だけを集めて一冊の本にできる俳人は、
森澄雄以外に誰かいるだろうか
          (by清水哲男『増殖する俳句歳時記』より)

愛妻俳句で有名な森澄雄から、春の一句を紹介します。

「野遊び」と「ゑくぼ」、少女や幼児で描かれそうな取り合わせですが、
森澄雄の目は「妻」に、しかも「肘えくぼ」に注がれています。
微笑ましさに、そして一抹の羨ましさに、もう、メロメロになってしまう一句です。
笑窪の生まれる、ふくよかで瑞々しい腕・・・。
その腕は、夫を支え、生活を守り、日々を誠実に慈しんでいるのではないかと、
だからこそ夫は妻の肘えくぼに、こんなにも優しい眼差しを向けているのではないかと、
ジワ・・・っと膨らむ余韻にうっとりlovely

森澄雄は、「死の行軍」と呼ばれたボルネオからの生還兵。
マラリアや飢餓によって、約200人の中隊がわずか8名になっていたそうです。
「生きて帰国できたら、妻や子供を愛し、平凡に生きてゆきたい」
その思いが森澄雄の俳句の原点になったといいます。
もちろん、そういった背景を知らずとも、句の魅力は揺るがないのですが、
「そうだったのか」と知った時、胸に迫ってくる思いが、
句を一際印象深くすることも間違いありません。

向日葵や起きて妻すぐ母の声
子が食べて母が見てゐるかき氷
妻がゐて夜長を言へりさう思ふ
除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり

いずれの句も、「そんな妻と一緒にいられて幸せだ」といった、
作者の満ち足りた微笑みが見えるようです。
お見舞いに行く度に『NHK俳句』テキストなどを持っていって、
お義母さんに俳句を読んで一緒に楽しんでいますが、
一番反応がいいのが森澄雄の句です。
やはり、自分の身に置き換えられて、スっと入ってくるのだと思いますし、
何より幸福感が伝わるのでしょう。
とても良い表情で頷いてくれるのです。

最後に、森澄雄の言葉を紹介します。

「ぼくはいっぺんも、自分が俳人だと思ったことはありません。
俳人が俳句を作るのではなくて、素の人間が俳句を作っている、それが大事なんです。
俳句を拵える時に皆さんは、自分の人生はそっちに置いて、
いい句を作りたいなあという思いで、材料や季語を探す場合が多くないでしょうか。
ここにお集まりの皆さんには、六十年なり、七十年なりを生きていらした方が多い。
それだけの人生を生きてきたということは、その人にとってもう宝なんです。
人生の味わいをたっぷりと持っているはずであって、
いちばん豊かな俳句をつくることができるという感じがいたします。
ですから、自分がもっているその宝で俳句を作らないで、ただの俳人になって、
頭ばかり働かせて材料や季語を探しているのはとても惜しいことだと思いますね。
自分の人生で俳句を詠む、素の人間が俳句を詠む、これが最も大切なんです。」

(ブログ「再生への旅」より引用)

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