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2017年7月17日 (月)

【名】今生の汗が消えゆくお母さん/古賀まり子

この句を初めて読んだのは、お義母さんのお見舞いにケアセンターに入る前に、
お昼を食べに向かいの喫茶店に入った時だった。
お義母さんが喜ぶので毎回持参している、『NHK俳句』のテキストに載っていて、
注文したオムライスが来るまでの時間にページをめくっていた私は、
不意を衝かれて思わず涙ぐんでしまった。
いつもならカウンター越しにスプーンやお味噌汁を渡す、喫茶店の”お母さん”が、
わざわざ後ろに回って届けにきてくれた。
私があんまり何度も涙をぬぐっているので、「何を読んでいるんだろう」と思ったのだろう。
そして納得したのだろう。
何も話しかけることなく、”お母さん”はカウンターに戻って行った。

俳句には主観を持ち込むべきではない、と教わった。
この句も、ただ目の前の母の姿を描写しているだけである。
だが、この一句を読み下した時、胸に溢れるこの思いはどうだろう!
十七音に凝縮された人生、言葉に出来ない思いがなだれ込み、
「ゆっくり休んで・・・」と手を握りしめたい気持ちになる。

藤田湘子の本にあるように、ゆっくり、五・七・五を区切って読むと、この句の感動はさらに大きくなる。

「今生の、汗が消えゆく。・・・お母さん」

冷静な観察から一転、絞り出すような「お母さん」。
語尾を震わせずに読むことが出来る人が、果たしているだろうか?
そう思うほど、生々しく魂を揺さぶる一句である。

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名句鑑賞」カテゴリの記事

コメント

めぐるしゃん

涙が出ます。下5の「お母さん」の呼びかけが本当にもう。

>この句も、ただ目の前の母の姿を描写しているだけである。

本当にそのとおりで・・・俳句の底力を感じました。

私事ですが先週、長い闘病の末、義父が亡くなりました。
亡くなる直前に一万円を義父からもらい「好きな物を買いなさい」という伝言だったので
角川の秋の歳時記を購入し「今夜にも」と言われていたため急いでホスピスへ駆けつけました。
会話もできないだろうと思っていたのですが「お父さん」と声をかけ
「高くて買えなかった歳時記をいただいたお金で買いました。ありがとうございました。
今、俳句が大好きなんです」と言うと、ベッド柵を抱えるようにて背を向けていた義父が
こちらを向いて「そうか」と言うようににっこり笑いました。嬉しかった。
次の日に義父は亡くなりました。
通夜と告別式でたくさん句が浮かんだので蜩と菊日和は葬式とお坊さんばかり。
それもまたよし、と思っています。

めぐるさんのブログには運命を感じることが多くとインスピレーションを与えられます。
いつもありがとうございます。
俳句が好きだったお義母様のエピソード、またブログに載せてもらえたら嬉しいな。

ああ、古賀まり子さんの・・・泣けます。本当に・すばらしく切ない句ですね。

◆桃にゃん

なんと・・・大変な時を過ごされていたのですね。
心より、お悔み申し上げます。
最後に、お義父さん喜ばれたことでしょう。
「歳時記」という、これからの人生をともにするパートナーを買ったと伝えたことで、
桃にゃんの人生の役に立った喜びも感じたでしょうし、
「これからもお義父さんとずっと一緒です」と伝わったと思うのです。
それが笑顔に繋がったと思います。心置きなく旅立たれたことと思います。
何故かしら、先週くらいから「お母さん」を書かなければ!と急き立てられるような気持ちだったんです。
以心伝心だと嬉しいなあ。

◆恵子さん

古賀まり子さん・・・「紅梅や病臥に果つる二十代」など、生死を見つめた句の多い方ですね。
この「お母さん」は、本当に圧倒的です。
水原秋櫻子に師事していたとのこと、
何故だろう、「秋櫻子忌」以来、ゆかりの俳人の名前(句)が目につくようになった気がする。
藤田湘子もですものねshine

「今生の汗が消えゆくお母さん」

恐ろしく、鋭い句。読みの紛れも無い。
とても分かり易く、1~2秒で読み下せて意味を理解できる句。
その割にインパクトは絶大で、読んで唖然とするレベル。

この句で目を引くのは、呼び掛けとも読み取れる、状況説明の「お母さん」。最後に来たこの言葉は、あまりにも重い。
しかし、個人的には……この句の「最大の急所」は、「(今生の)汗」にあると思う。

人の死や、今わの際を題材にした句や詩は、決して少なくない。しかし……「今わの際」を書くのに、「汗」という言葉(=なかなか目の行かない場所)を引っ張って来る感性(=発想力or観察力)の鋭さは、ただただ「すごい」の一言。
(ちょっと恐れ多いが)発想力の訓練として、「「汗」の代わりに、ここに持ってこられるような単語があるだろうか?(=今わの際を書くのに、何か別の効果的な表現があるだろうか?)」という事を考えてみたところ……凡人(下手すりゃそれ以下wobbly)の私の頭だと、

原句:今生の汗が消えゆくお母さん
1.【今生の言葉消えゆくお母さん】
2.【今生の涙消えゆくお母さん】

……といった、ありきたりな言葉しか出てこないcrying
しかも、「言葉」にしろ「涙」にしろ、助詞の「が」がないために動作主体がはっきりせず(母なのか子なのか分からない)、読みに紛れが生まれる。しかし原句なら、間違えても「汗を流しているのは、母を看取ろうとしている子の方である」とは読めまい。

それに……「汗」には、もう1つ重要な意味があると思う。
「言葉」や「涙」は自発的な意思や感情で発生するものだが、「汗」は自らの命を守るための生理的反応であり、そこに自発的な要素は存在しない。

生物は、本人の意思とは関係なく、最後の最後まで生きようとする。自発意思でコントロールできない生理的反応は、その表れ。
生きている者の力強さ、死を目の前にしてなお生き続けようとする悲しさ、抗えぬ死に抗おうとする空しさ、死を迎えた者の儚さ……
……こういった要素の集約が「汗」という言葉なのではないかと、少なくとも私は思っている。

また、「汗が消えたる」のような過去形ではなく、「汗が消えゆく」という現在進行形で、さりげなく「亡くなってからの時間経過(=亡くなった直後の、何とも言えない空気感)」を示唆しているのも興味深い。
 
 
 
いずれにしろ……この句は私にとって、色々と学ぶべき所や考えさせられる所が非常に多い句だと思いました。
めぐるさん、どうもありがとうございましたhappy01

あと……感動的な句なのに、句の読みが妙にドライですみませんcoldsweats02

◆ヨミビトシラズさん

コメント有難うございます!
やはり名句中の名句・・・!があんと心に響いてきますね。

>今生の汗が消えゆくお母さん 
「汗」が季語ですが、ここでは季語としての役割以上に、
「体温を失っていく」という抜き差しならない場面を端的に伝える言葉として、
また、「生きている間中苦労をかけた」、そんな娘の思いまでが見える、
これ以上ない奇跡の言葉と言っていいかと思います。
ほんとうに凄味のある句・・・ですね。

>助詞の「が」がないために動作主体がはっきりせず
「今生(生きている間)の」という言葉が頭にありますので、
「言葉」も「涙」も「お母さん(死にゆくひと)」のものだと、
十分伝わると思いますよ。
ただ、それだと無季語の句になってしまいますが・・・。

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